Flankerの見聞録

バイクとカメラと食った物を自分視点で語っていきます。

バイクの電装系トラブルの仕組みと予防策について考えてみる

バイクの電装系トラブルの仕組みと予防策について考えてみる

最近私のTwitterのバイク乗りのフォロワーさんで、電装系トラブルに悩まされている方が結構います。

ある人は「電圧下がって最近エンジンのかかりが悪い…」

またある人は「走ってる間に止まった…セルは回っても点火しない…」

またまたある人は「ジェネレーターコイル焦げた…これで3個目だ…」

と色んなパターンがあります。

 

私の場合は今のところその様な事態には陥ってはいないのですが、いつ起こるかはわかりません。

仕事柄自動車向けの電装品についての知識を扱うことが多いので、今回は電装系トラブルが発生する仕組みと対策方法について考えてみようと思います。

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まず電気の基礎的な部分を復習しましょう。

電気を取り扱う上で基本的な数式があります。皆さんご存知オームの法則です。

式で表すと V=IR【V:電圧(V→ボルト)、I:電流(A→アンペア)、R:抵抗(Ω→オーム)】です。

電圧は電流×抵抗で決まると言うすごくシンプルな式です。

 

そして今回の検証に必要な数式があります。それはジュールの法則という数式です。

式で表すと Q=I²Rt 【Q:ジュール熱(J→ジュール)、I:電流(A)、R:抵抗(Ω)、t:時間(s→秒)】です。

ジュール熱とは電気ストーブやドライヤーを使ったときに発せられる暖かい空気の事でだと思ってください。

(ジュール熱の定義を語ると非常に!!!!面倒くさい事を書き連ねていく必要があるので今回は割愛します)

この法則はジュール熱はある抵抗値の電線に電流を〇〇秒ながしたときに発せられる熱の量を表しています。

また電流・抵抗・時間はすべて掛けられているので、どれかの値が大きくなるほど右肩上がりにジュール熱も大きくなります(比例関係)

 

 

ではこれらの法則を使ってバイクの電装トラブルに当てはめてみましょう。

まずバイクの電装トラブルの発端といえばジェネレーターで発電する電気の電圧低下になります。

始めに、なぜ電圧が低下するのか?を考えてみましょう。

バイクは基本12Vで、エンジンがアイドリング状態では13~14Vくらいになりますが、今回は12Vとして考えていきます。

 

オームの法則に当てはめると、V=IRなので電圧が下がる原因として、電流か抵抗の値が変化したことにより電圧が下がるということになります。

 

次に電流と抵抗のどちらの値に変化があったかを原因を考えてみましょう。

2000年代以降のバイクはECUによって、点火やインジェクターの噴射を制御しています。

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最近のバイクは本当に電装品だらけです

それらの部品の殆どが12Vで作動するにように作られているため、ECUは12Vの電圧を保とうとしています。

ある部品で電圧の低下が発生し、12Vを保てない場合はECUはその部品への電圧供給を安定させるため電流を多く流すように指令を出します。

なぜ電流か?というと、抵抗の値というのは使っている電線や基盤の物性や長さで決まるもので、上げたり下げたりできる自由度が殆どありません。

なので電流を調整して電圧を保ちます。

 

ここで例にすると普通は電圧12Vを保つのに電流10Aで事足りていたのが、電圧低下が発生し12Vをキープするため12Aまで電流を上げた。とします。

12Vを保つために電流が12Aになります。

 

電流が上がったとなると今度はジュールの法則が関係してきます。

12A上がったということはQ=I²Rtなので、電流が2乗になって効きますので、

今まではQ=10²Rt=100Rtの熱だったのが、12AになったのでQ=12²Rt=144Rtと熱量となります。

熱量としては144÷100=1.44となり、今までより1.44倍の熱が発生します。

 

そしての発生する熱がかなり厄介な存在です。

熱というのは銅線や基盤を劣化させる作用があります。通称熱劣化と呼びます。

この熱劣化は、銅線の温度が上がると銅線等の物性が変化し抵抗の値が上がります。

どの位抵抗値が上がるかは、使ってる銅線の種類や太さによりますが1℃上がると数%抵抗値が上がると言われています。

 

抵抗値が上がると今度は電流が流れにくくなり電流の値が下がります

電流の値が下がると、電圧の値も下がります

そうするとECUは電圧を保とうと、更に電流を多く流すように指令を出します。

 

電圧を保つため更に電流を流す上に抵抗値も上がったので、熱の発生はさらに高くなります。

簡単に書きますと

①電圧が下がる → ②ECUが電流を増やすよう指示を出す → ③電流を多く流すと熱が発生し銅線が劣化する → ④劣化により抵抗値が増える → ⑤抵抗が増えると電流の値も下がる → ⑥電流値が下がるので電圧も下がる。→②にもどる

と、この様にループしている状態になります。

この状態が続き、ジェネレーターの発電電流の限界を迎えると電圧が下がっていくだけになり、最終的に電装系のトラブルが発生する仕組みになります。

 

 

 

ではどうやって予防できるか!?

まず大きな要因としては銅線の劣化による抵抗値の増加が挙げられます。

劣化する原因としては先ほどの熱や、雨水や潮風などによる銅線類の腐食が考えられます。

 

熱による劣化についてはエンジンから発する熱も考えられます。

バイクのハーネスはかなりキツキツに取り廻されている場合があるので、そのままの長さでエンジンからの熱を遠ざけるように取り廻そうと思っても長さが足りない場合があります。

 その際はこのような電線用の断熱テープを巻いてあげるだけでも効果はあると考えられます。

また電装品を付けて敢えて電気を使ってあげるという方法もチラホラ耳にしますが、今回の検証からすると本来の必要以上に電流を流す必要があり、銅線等の劣化を促進させてしまう為予防策としては適していないと思われます。

 

次に雨水や潮風による腐食を抑える方法としては、まず家に置いておく場合はカバーをかけることが大事です。

屋外はもちろんですが、ガレージの中でもカバーを掛けておくとホコリの侵入を抑えられますので、乗らないときはカバーを必ず掛けるというのが良いでしょう。

 

洗車についても高圧洗浄機でガシガシ水をバイク全体に掛けるではなく、電装品が集中している部分については、手でバケツの水をバシャバシャとかけてあげる位のほうが、カプラーなどからの水の侵入を抑えることもできるので、洗車の時もちょっと気を遣う方が良いでしょう。

 

バイクの特性上、電装品は屋外に出ている為劣化するスピードは速いですが、ちょっと気付きで劣化を抑えることができると思いますので、ちょっとでもいいので気を使って乗ってあげてみて下さい。